オンプレミスとクラウドの違いとは?選び方のポイントまで徹底解説!
- Cloud
- オンプレミス
- ハイブリッドクラウド
- 移行
オンプレミスとクラウドは対比的に使われる言葉ですが、両者の違いを正しく理解できている方は意外と少ないのではないでしょうか?両者はそれぞれが異なる特徴を持っており、自社の状況や目的に応じて選択すべきサービスは変わります。
そこで本記事では、オンプレミスとクラウドのそれぞれの概要や両者の違い、サービスの選び方など、あらゆる観点から一挙にご紹介します。また、オンプレミスとクラウドを組み合わせた「ハイブリッドクラウド」についても触れていますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
オンプレミスとは?
もともとプレミス(Premises)とは、「構内」や「建物」という意味を持ちます。プレミスという言葉から派生したオンプレミス(On-Premses)は、「自社運用」の意味を示します。
オンプレミスとは、システム構築に必要なサーバーや回線、ソフトウェアなどを自社内またはデータセンター内に設置し、システムの構築から運用までを自社で行う形態を指します。ちなみに、オンプレミスを「オンプレ」の略称で呼ばれることも多いです。
オンプレミスは自社ですべての設備をコントロールできるため、システムを自由自在にカスタマイズ可能です。複雑な要件や自社が実現したいことに柔軟に対応できる点は、オンプレミスのメリットだと言えるでしょう。
一方、様々な IT 設備を自社で揃えるためには多額のコストが発生します。また、システムを使い始めた後の運用も自社で行う必要があり、管理運用にかかる手間や人的コストも必要になります。このように、多額の費用や運用の工数が発生する点はオンプレミスのデメリットであると言えます。
クラウドとは?
クラウドはオンプレミスと異なり、 IT システムに必要な機器を自社で保有しない運用形態です。データセンターなどの設備を自社で設置・管理する必要がないため、スムーズに導入することが可能です。
具体的なクラウドサービスとしては、
- Gmail
- Google ドライブ
- Google カレンダー
など、インターネット接続を介して利用するサービスが挙げられます。
クラウドは自社で IT 設備を保有せず、他社のリソースを使用する形態であるため、初期費用や運用工数を抑えることができます。さらに、簡単な手続きを行うだけでスケーリング(リソースを自由に増減すること)ができるので、柔軟性の高いシステム運用を実現可能です。
一方、オンプレミスと比較するとカスタマイズ性は低く、細かい部分まで作り込みを行うことは難しくなります。また、クラウドは使用量に応じて料金が変化する従量課金制を採用しているサービスが多く、無計画に使い続けると想定外の高額な費用が発生することがあります。
クラウドに関して理解を深めたい方は以下の記事がオススメです。
【初心者向け】クラウドとは何か?具体例やメリット・デメリットまで徹底解説!
オンプレミスとクラウドの違い
IT 機器の調達
ここで言う IT 機器とは、物理サーバーやネットワーク機器など、システムを構築する上で必要になる機器のことです。オンプレミスは自社で IT 機器を調達する必要がありますが、クラウドはクラウド事業者が IT 機器の調達を行うため、自社が手間をかける必要はありません。
初期コスト
オンプレミスはすべての設備を自社で用意する必要があるため、初期コストが高額になる傾向があります。一方、クラウドは他社の環境を利用する形態であり、初期コストを低く抑えることができます。
運用コスト
オンプレミスの運用コストは保守にかかる人件費やサーバーの電気代などが挙げられます。しかし、クラウドの場合はこれらの費用を自社が負担することはないため、クラウドサービスの利用料が運用コストとほぼイコールになります。
運用開始までのリードタイム
オンプレミスは IT インフラを自社で整備するため、数ヶ月間のリードタイムが必要になるケースも珍しくありません。一方、クラウドは既に完成しているサービスを利用するため、時間をかけずに契約後すぐに使い始めることが可能です。
カスタマイズ性
オンプレミスは自社の目的や用途に応じて、自由自在にシステムをカスタマイズすることが可能です。その点、クラウドは他社環境を利用するという特性上、オンプレミスと比較すればカスタマイズ性には限界があると言えます。
冗長性
冗長性を高める手段としては複数サーバーの利用が一般的ですが、オンプレミスは高額な物理サーバーを自社で用意する必要があり、冗長構成を実現するためには多くの課題があります。一方、クラウドは複数の仮想マシンを冗長的に稼働させているサービスが多く、冗長性は高いと言えます。
冗長性に関心のある方は以下の記事が参考になります。
冗長性とは?確保することのメリット・デメリットや具体的なシステム構成を一挙紹介!
拡張性(スケーリング)
スケーリングとは、必要に応じて使用リソースを増減することです。オンプレミス運用でリソースを変更するためには物理サーバーの増減などが必要になりハードルが高いですが、クラウドであれば契約内容を変更するだけで簡単にスケーリングできます。クラウドサービスによってはオートスケールしてくれるサービスもあります。
セキュリティ
オンプレミスは自社ネットワーク内での使用を前提としているため、情報が外部へ流出するリスクを抑えられます。しかし、クラウドはインターネット接続を前提としており、マルウェアやサイバー攻撃などの標的になる可能性があります。
万が一、これらの攻撃を防げなかった場合は社内の機密情報が漏洩し、取り返しのつかない事態に発展することも考えられます。そのため、クラウドを導入する場合はセキュリティレベルの高いサービスを選ぶことが必須条件だと言えるでしょう。
バックアップ
オンプレミスの場合、データのバックアップは自社で仕組みを構築する必要があり、何もしなければ当然バックアップを取ることはできません。一方、SaaS型のクラウドサービスでは、自動バックアップを取得してくれるサービスもあるため、ビジネスシーンでも安心して利用できます。
災害リスク
オンプレミスはすべての設備を自社で用意するため、災害リスクは自社のロケーション(地理的な立地)やセキュリティ対策の手厚さに依存します。万が一に対する備えを行なっていないオンプレミス運用の場合、災害リスクは高いと言えるでしょう。
一方、クラウドは自社のデータを堅牢なデータセンター内のサーバーで保管することができますし、クラウドサービスのデータセンターは、自然災害に強い立地・構造になっているため、非常事態においてもデータの安全性は確保されています。
オンプレミスとクラウドの災害対策に関心のある方は以下の記事が参考になります。
まとめ
以下、オンプレミスとクラウドの違いを表にまとめます。
オンプレミス | クラウド | |
---|---|---|
IT 機器の調達 | 自社で対応する必要がある | 自社で対応する必要はない |
初期コスト | 高い | 低い |
運用コスト | 人件費・電気代など | サービス利用料金 |
運用開始までのリードタイム | 長い | 短い |
カスタマイズ性 | 高い | オンプレミスと比較すれば低い |
冗長性 | 低い場合がある | 高い |
拡張性(スケーリング) | 低い | 高い |
セキュリティ | 高い | オンプレミスと比較すれば低い |
バックアップ | 万全ではない場合がある | 万全 |
災害リスク | 高い | 低い |
このように、オンプレミスとクラウドには様々な違いが存在します。そのため、それぞれの違いを正しく理解して、自社の状況に合わせて最適なものを選ぶことが大切なポイントです。
オンプレミスとクラウドのどちらを選ぶべき?
オンプレミスが向いているケース
自社独自のシステムを運用している場合や、複雑かつ大規模なカスタマイズを行っている場合などはオンプレミスがオススメの選択肢になります。クラウドはオンプレミスと比較してカスタマイズ性が低く、自社システムをクラウドで運用できない可能性があります。
また、セキュリティを極限まで強化したい場合もオンプレミスが有効です。オンプレミスはサーバーやネットワーク機器などのインフラ部分を自社で揃えるため、納得のいくまで様々なセキュリティ対策を施し、開発環境やシステムの安全性を高めることができます。
ただし、高額な初期投資や障害時の対応など、大きな費用・工数がかかる点は十分に理解した上でオンプレミスを利用してください。あとから後悔しないためには、事前に全体計画を立ててコストシミュレーションを実施するのが良いでしょう。
クラウドが向いているケース
初期投資を抑えたいケースでは、クラウドがオススメの選択肢だと言えます。高額なサーバーや高品質なネットワークを自社で用意する必要はないため、気軽にシステムを利用することができます。
また、サーバーの保守・運用や障害復旧についてもクラウド事業者がすべて対応してくれるので、自社のリソースに余裕がない場合でも安心してシステムを運用できます。さらに、システム拡張を検討する際も自社での設備購入は不要であり、リソースを追加するだけで簡単にスケーリング可能です。
昨今、新型コロナウイルスの感染拡大などの影響で大きな社会変化が起こっており、消費者ニーズの高度化・多様化が進んでいます。そのため、高額な初期費用が必要なく「使いたい時に必要な分だけ使える」というクラウドのメリットはとても大きいと言えるでしょう。
ただし、セキュリティの低いクラウドサービスを選んでしまった場合、仮にインシデントが発生したら取り返しのつかない事態になります。自社が求めるセキュリティ要件を明確化し、安心して利用できるクラウドサービスを選択してください。
状況に応じてハイブリッドクラウドの選択もオススメ
ハイブリッドクラウドとは?
ここまで、オンプレミスとクラウドについてご説明してきましたが、状況によってはハイブリッドクラウドという選択肢も存在します。
ハイブリッドクラウドとは、
- プライベートクラウド(自社が占有型で構築・運用するクラウド形態)
- パブリッククラウド(複数社が共有型で利用するクラウド形態)
- オンプレミス型のインフラ
- クラウドサービス
など、異なるサービスを組み合わせて活用するクラウドの運用形態を指します。複数タイプのクラウド環境および各サービスを併用し、それらの要素を相互接続して使うため、単独のクラウド環境と比較すると、即応性に長けています。
また、ハイブリッドクラウドは、様々なプラットフォームで構成されたサービスを組み合わせているため、相互補完性の高いクラウド環境と言えます。これまで単独のクラウドサービスでは補えなかった要素を、利用用途や領域、運用コストに応じて使い分けることが可能なため、より柔軟かつ自由度の高いクラウド環境であると言えるでしょう。
ハイブリッドクラウドのメリット
複数のタイプのクラウド環境を混合させるハイブリッドクラウドでは、ビジネスの業務領域や情報の性質に応じてマシンスペックを増減できるため、クラウドの負荷分散ができます。これにより、重い処理などが必要になる場合でも、安心してシステムを運用できます。
また、導入や運用におけるコストを軽減しながら、ビジネス要件に応じて柔軟にクラウド環境を利用できる点もハイブリッドクラウドのメリットだと言えます。さらに、情報の重要度に優先順位をつけることで、パブリッククラウドとプライベートクラウドを使い分けるような運用をすれば、比較的低価格で高度なセキュリティ体制を構築可能です。
ハイブリッドクラウドのデメリット
ハイブリッドクラウドはシステムの性質上、複数の異なるタイプのクラウド環境を混合して、それらを相互に補完する形で利用することになります。そのため、プライベートクラウドやパブリッククラウドの理解度はもちろん、システムを構築する上での構成や統合における知識や技術が不可欠です。
また、ハイブリッドクラウドを最適に運用していくためには、継続的に運用していくためのプロセスも重要なポイントです。ハイブリッドクラウドは、システム構成が複雑なため、求められる管理項目や必要となる知識も多様化することから運用が難しくなりがちです。
そのため、全体のコストにフォーカスするあまり、どちらか一方の比重に頼りすぎると、結果的にコストが抑えられていないというケースもあるため、ハイブリッドクラウドの性質を理解した人材を配置することが重要なポイントになります。
まとめ
本記事では、オンプレミスとクラウドのそれぞれの概要や両者の違い、サービスの選び方など、あらゆる観点から一挙にご紹介しました。
オンプレミスとクラウドは異なる特徴を持っており、それぞれにメリット・デメリットが存在します。どちらが 100 % 正解ということではなく、自社の置かれている状況に応じて最適なサービスは変わるため、両者の違いを正しく理解して、より適したものを選択することが大切です。
なお、クラウドが絶対に正しいというわけではありませんが、オンプレミスからクラウドに移行することで企業は様々なメリットを享受できます。管理費の削減やトラブル対応からの解放など、自社のコスト削減や業務効率化に大きく寄与します。
また、オンプレミスとクラウドを組み合わせて利用するハイブリッドクラウドも有効な選択肢の一つです。オンプレミスとクラウドのどちらを使えば良いのか?と迷ってしまう場合は、ハイブリッドクラウドも選択肢に加えてみてください。
本記事を参考にして、ぜひクラウド移行を検討してみてはいかがでしょうか?
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