【GCE対VMware Engine】Google Cloud (GCP)を活用したモダナイゼーションを解説
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本記事は、2022年4月20日に開催された Google の公式イベント「 Google Cloud ML サミット」において、 Google Cloud カスタマーエンジニアの畝高孝雄氏が講演された「あなたのそのサーバ、 Google Cloud にしてみませんか?〜 IaaS として Google Cloud を活用する方法〜」のレポート記事となります。
今回はオンプレミスからクラウドへ移行する際のモダナイゼーションの基礎をご説明し、その中でもインフラストラクチャモダナイゼーションにおける Compute Engine と VMware Engine という2つのサービスについて、それぞれの特徴や違い、使い分けの方法などを詳しくご紹介します。
なお、本記事内で使用している画像に関しては、 Google Cloud ML サミット「あなたのそのサーバ、 Google Cloud にしてみませんか?〜 IaaS として Google Cloud を活用する方法〜」を出典元として参照しております。
それでは、早速内容を見ていきましょう。
目次
サーバー移行とは?
昨今、クラウド技術が急速に広まっており、サーバーに関してもその例外ではありません。多くの企業がクラウド化に舵を切っており、サーバーを含めた設備や機器を「所有する」時代から「利用する」時代へとシフトしています。
しかし、一口に「サーバーをクラウド移行する」と言っても、その方法は多岐にわたります。サーバーをクラウドへ移行する目的は利用形態を変えるだけではなく、その他の部分で何かしらの改善を期待しているケースが多く存在し、これを一般的には「モダナイズ」と呼んでいます。
サーバー移行におけるモダナイズは「アプリケーションモダナイゼーション」と「インフラストラクチャモダナイゼーション」の2つに大きく分けられます。下図の通り、それぞれ改善を期待するポイントや目的が異なっています。
そして、さらに詳しくモダナイズ方式を分類したものが下図になります。
このように、モダナイズの手法には数多くの種類が存在しており、手法ごとに特徴は異なります。そのため、各手法の手順や特徴を正しく理解して、自社に最適なモダナイズ手法を選択してください。また、これらの分類は「一度やれば終わり」というものではなく、現状を踏まえて継続的に見直しを図ることが重要なポイントになります。
Google Cloud (GCP)のコンピューティングサービス
ここからは、 IaaS として Google Cloud (GCP)を利用する際の選択肢となるコンピューティングサービスについてご紹介します。
Google Cloud (GCP)では多くのコンピューティングサービスを提供しており、代表的なものが以下の7つのサービスです。
上図の左から右に向かって、インフラに近いものからアプリケーションに近いものへと順番に並べています。物理サーバーや仮想マシン、コンテナなど、サービスごとに提供する内容は異なるため、自社に適したものを選ぶことが大切です。
以下、各サービスの対象範囲をわかりやすく図にまとめます。
上図の左下にある「クラウド移行対象アプリケーション on オンプレミスサーバ(物理、仮想)」という部分から、上に向けて進んでいるものがインフラストラクチャのモダナイゼーションであり、右に向けて進んでいるものがアプリケーションのモダナイゼーションです。
このように図で眺めてみると「いきなり全てをクラウドネイティブ化することは難しい」と、ご理解いただけると思います。なぜなら、インフラストラクチャとアプリケーションにおけるモダナイゼーションのターゲット領域が異なれば、そのプロジェクトに関わるメンバーや作業内容も異なるためです。
そのため、まずはインフラストラクチャのモダナイゼーションを進めて全体を最適化した上で、アプリケーションのモダナイゼーション対象となるものを順番にモダナイズして個別に最適化することがオススメです。これにより、効率的かつスムーズにクラウド化を進めることができます。
また、ここで「マネージド」という言葉について考えてみましょう。下図はインフラストラクチャのモダナイゼーションに使われる3つのサービスを比較したものです。
図の中で青色に塗られている部分はお客様(ユーザー)の管理責任範囲であり、灰色に塗られている部分は Google の管理責任範囲です。オンプレミスからクラウドへの移行においては、サーバーや OS などのリソースのコストだけで比較されているケースもありますが、クラウドサービスにはリソースの提供だけではなく運用管理の部分も含まれています。
例えば、 Google Cloud (GCP)へ環境移行することで、本来は自社で対応すべき障害対応や稼働干渉などを Google に任せることができ、業務工数の削減や生産性向上に直結します。このように、 Google Cloud (GCP)への移行は利用形態の変化だけではなく、環境構築後の運用管理を効率化できる点も大きなメリットになります。
ただし、 Google に任せられる範囲は選択するサービスによって異なるため、これらの観点を踏まえた上で使うべきサービスを比較検討すると良いでしょう。
ここからはインフラストラクチャのモダナイゼーションに焦点をあて、 Compute Engine と VMware Engine という2つのサービスについて、それぞれの特徴や違い、使い分けの方法などを詳しくご説明します。
Compute Engine と VMware Engine の使い分け
各サービスの特徴
以下、 Compute Engine と VMware Engine の特徴を表にまとめます。
この中でも重要なポイントが「計算リソースの提供単位」です。 Google Cloud (GCP)側から見た時に Compute Engine は仮想マシンが提供単位であり、 VMware Engine は ESXi ホスト(物理サーバー)が提供単位になります。つまり、 Compute Engine は仮想マシンごとに課金されますが、 VMware Engine は ESXi ホスト(物理サーバー)ごとに課金される、ということです。
また、 Compute Engine が使用する CPU は仮想マシンごとに選ぶことができ、モデルによっては GPU を選択することも可能です。最新のアップデートとして、 NVIDIA の A100 のような最新 GPU も東京リージョンにおいて提供開始されています。
一方、 VMware Engine の最新のアップデートとしては、従来は3ノードからの提供だったところが、評価や検証を目的として最大60日までの1ノード利用に対応した点が挙げられます。
このように、 Compute Engine と VMware Engine には様々な違いが存在するため、それぞれの特徴を正しく理解しておきましょう。
VM の違い
以下、 Compute Engine と VMware Engine の VM の違いを表にまとめます。
はじめにサポート OS について、 Compute Engine は基本的に現行 OS をサポートしますが、 VMware Engine はレガシー OS にも対応しています。そのため、サポートが終了している古い OS を継続利用している場合は VMware Engine が有効な選択肢になります。ただし、クラウド移行を契機として新しい OS にバージョンアップできれば、当然それに越したことはありません。
また、ゲスト OS に関しても大きな違いが存在し、 Compute Engine は Google Cloud (GCP)がイメージを提供するのに対して、 VMware Engine はユーザー自身で用意する必要があります。このようなポイントを踏まえながら、自社の状況に合わせて最適なサービスを選択してください。
運用管理の違い
以下、 Compute Engine と VMware Engine の運用管理の違いを表にまとめます。
運用管理については様々な違いが存在するものの、 Compute Engine 、 VMware Engine ともに既存の運用監視手法を踏襲して利用することができます。上図はあくまでも、 Google Cloud (GCP)がサービスとして提供している機能との組み合わせに関して比較しているものです。
その他の違い
以下、 Compute Engine と VMware Engine のその他の違いを表にまとめます。重要なポイントをいくつかピックアップしました。
まずはコスト面ですが、 Compute Engine は仮想マシン単位でのリソース提供となるため、 VM を停止すればコストを抑えることが可能です。例えば、夜間のバッチ処理用のサーバーであれば、日中帯の稼働を止めることでコスト削減に繋がります。
一方、 VMware Engine は ESXi ホスト(物理サーバー)単位でのリソース提供となるため、 VM 停止がコストに直結することはありません。ただ、 VM の集約度を高めて ESXi ホスト(物理サーバー)の台数を減らすことができれば、コストを抑えることが可能です。
他にも重要な違いを上図にまとめていますので、それぞれのポイントを理解しておいてください。
ロードバランサーについては以下の記事で詳しく解説しております。
負荷分散の重要性とは?ロードバランサーのメリット、デメリット、選び方を徹底解説!
Google Cloud においてのロードバランサーの種類と概要、適切な選び方は以下の記事で詳しく解説しております。
Google Cloud (GCP)の多彩なロードバランサーを一挙に紹介!
Compute Engine や VMware Engine でのマネージドサービスの活用
ここまでは Compute Engine と VMware Engine のサービス自体の特徴についてご説明しましたが、本章では IaaS 中心で Google Cloud (GCP)を利用する場合に使える代表的なマネージドサービスをご紹介します。
リソースとしての主なマネージドサービス
最初にご紹介するのは、リソースとして使えるマネージドサービスです。
Cloud Filestore
Cloud Filestore はマネージドで提供されているファイルストレージです。「 Basic 」「 Enterprise 」「 High Scale 」の3つのティアモデルから選択でき、1〜100 TiB の範囲で自動スケールアップまたはスケールダウンに対応しています。
Cloud Storage
Cloud Storage は容量無制限のオブジェクトストレージです。「 Standard 」「 Nearline 」「 Coldline 」「 Archive 」の4段階ストレージクラスが用意されており、 99.0% 〜 99.95% の可用性や 99.999999999% の年間耐久性を誇るなど、安心して利用できるサービスとなっています。
Cloud SQL
Cloud SQL はマネージドで提供されているリレーショナルデータベース(RDBMS)です。 Database Migration Service (DMS)を提供しており、バックアップや高可用性、メンテナンスなどをサービスとして提供しています。
管理機能としての主なマネージドサービス
次に管理機能としてのマネージドサービスをご紹介します。
Cloud DNS
Cloud DNS は 100% の可用性と低レイテンシに対応したマネージドな DNS です。公開ゾーンと限定公開ゾーンに対応した権威 DNS サービスとなっており、転送ゾーンと受信 DNS 転送により既存 DNS との併用も可能です。
Managed Service for Microsoft Active Directory
Managed Service for Microsoft Active Directory は Microsoft Active Directory のマネージドサービスです。マルチリージョンへの展開に対応しており、 AD のセキュリティや保守、可用性の確保などをサービスとして提供しています。
Google Cloud (GCP)を活用したクラウド移行に関するQ&A
Q.オススメの移行方法や移行ツールはありますか?
A.例えばオンプレミスで VMware を使っている場合は、 VMware Engine を活用することで簡単かつコストを抑えながら移行することができます。移行方法には様々な選択肢があるので、自社の状況に合わせて最適なものを選ぶことが重要です。また、移行ツールに関しては migrate for compute engine というツールを Google が提供しています。
VMware でのハイブリッドクラウド移行の方法についても記載しておりますので、あわせてご覧ください。
Google Cloud ( GCP )の VMware Engine とは?アーキテクチャや設計時のポイントまで徹底解説!
Q.VMware Engine のバージョン制限はどの程度の柔軟性がありますか?
A.VMware Engine はマネージドで提供されるサービスであるため、常に最新バージョンが自動的に適用されます。
Q.既存環境から移行する場合のコストを試算するツールはありますか?
A.はい、 Google は StratoZone というツールを提供しており、これを利用することで実情に沿ったコストや利用状況を把握することができます。
Q.オンプレミスから Google Cloud (GCP)へ移行した場合、どの程度のコスト削減が実現できますか?
A.ケースバイケースなので一概には言えません。大幅なコスト削減を実現できる場合もありますし、また、可用性などコスト以外の部分で大きなメリットを享受できる点も重要なポイントだと思います。
参考までに弊社サポート事例でもオンプレミスからGoogle Cloud (GCP)へ移行した事例がございますので、気になる方は合わせてご覧ください。
トップゲートと「 One Team 」でのプロジェクト進行。オンプレミスから Google Cloud への移行で月額コスト40%削減
まとめ
今回はオンプレミスからクラウドへ移行する際のモダナイゼーションの基礎をご説明し、その中でもインフラストラクチャモダナイゼーションにおける Compute Engine と VMware Engine という2つのサービスについて、それぞれの特徴や違い、使い分けの方法などを詳しくご紹介しました。
自社サーバーを Google Cloud (GCP)へ移行するための重要なポイントは、移行判断のポリシーを決めることです。今回は技術要件に焦点を当てたご説明をしましたが、実際に移行を行う際にはビジネス要件やサポート要件、コスト要件なども考慮する必要があります。
そのため、これらを踏まえて自社の移行判断のポリシーを定め、その内容に応じて最適な移行方法を選択することが大切です。
また、この移行判断ポリシーは原則ユーザー自身が決めるものですが、場合によっては Google やパートナー企業がサポートをさせていただくケースも存在します。プロの目線からアドバイスを受けることで効率的な移行方法を検討できますので、ぜひお気軽にご相談ください。
クラウド移行はワンステップでゴールに到達するものではありません。複数のステップを踏みながら全体を最適化し、その中で細かい部分を日々チューニングしていく作業になります。今回ご紹介した Compute Engine や VMware Engine などを活用して、 Google Cloud (GCP)への移行に向けた第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか?
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