コンタクトセンター DX を実現! Contact Center AI を活用した実践的な業務デジタル化のアプローチとは?
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- コンタクトセンター DX
本記事は、2021年11月10日に開催された Google の公式イベント「 Google Cloud ML サミット」において、グーグル・クラウド・ジャパン合同会社のカスタマーエンジニアリング技術統括部長である渕野大輔氏が講演された「 Contact Center AI によるコンタクトセンター DX の実践的アプローチとは?」のレポート記事となります。
今回は、コンタクトセンターがデジタル変革を実現するための「コンタクトセンター DX 」について、 DX の第一歩として取り組むべき内容や利用するサービスの概要、実際の設計・効果検証のやり方など、一挙にご説明します。ぜひ最後までご覧ください。
なお、本記事内で使用している画像に関しては、 Google Cloud ML サミット「 Contact Center AI によるコンタクトセンター DX の実践的アプローチとは?」を出典元として参照しております。
それでは、早速内容を見ていきましょう。
目次
コンタクトセンター DX に向けての 1st Step
マーケットの状況
まずはマーケットの状況について正しく理解しておきましょう。昨今、急速なデジタルシフトにより、ユーザーの期待値は大きく変化しています。
USA market の調査によると、全体の 60% のユーザーが自己解決型のソリューションを希望しているとのデータが得られています。また、 64% のユーザーはリアルタイムなアシストを希望しており、迅速な対応が強く求められていることがわかります。さらに、75% のユーザーは、個別会話に対して有人である必要がないと考えています。
このように、市場環境とともに変化するユーザーの期待に応えるためには、従来のコンタクトセンターの在り方を見直し、高度化かつ多様化するニーズに対応するための新しい戦略を打ち出す必要があります。
なぜコンタクトセンター DX が必要なのか?
前項でご説明した通り、コンタクトセンターとしての存在価値を最大化するためには、既存の枠に囚われない運用を考えることが重要になります。では、なぜコンタクトセンターの DX が必要なのでしょうか。
一般的に、コンタクトセンターの運用部門は以下のような課題に悩まされています。
低い顧客満足度は既存顧客との関係維持に悪影響を与えますが、その一方で高品質なサービス提供かつ膨大なコール量は、エージェント満足度の低下や離職率増加に繋がります。さらに、コール量やコール時間の増加はオペレーションコストの増加に直結する点も大きな問題となっています。
これらの課題を解決するためには、デジタル化によってコンタクトセンターの運用を根本的に変革し、顧客満足度(CS)や従業員満足度(ES)、オペレーションコストなど、多角的な観点から対策を講じる必要があります。
Contact Center AI とは?
上記の課題を解決するためのソリューションとして、 Google は Contact Center AI (以下 CCAI と記載)を提供しています。 CCAI は Google の AI テクノロジーを最大限に活用することで、コンタクトセンターにおけるカスタマーサービスを改善できるサービスです。
CCAI は大きく分けて以下3つの機能を備えています。どれも、顧客満足度の向上やコンタクトセンターの運用効率化に大きく寄与する内容となっています。
ここから先は、上図に記載されている Virtual Agent について詳しくご説明します。この Virtual Agent こそがコンタクトセンター DX への第一歩となります。 Virtual Agent を活用することで、顧客はリアルタイムかつ無人の対応で、問題を自己完結することが可能になります。
Virtual Agent 設計のベストプラクティス
ここまで、コンタクトセンター DX の第一歩が Virtual Agent を活用することだとお伝えしました。次に、「 Virtual Agent をどのように構築すれば良いのか?」という点についてご説明します。
Dialogflow CX
まずは、ボットを構築するためのソリューションとして Dialogflow CX をご紹介します。 Dialogflow CX は、大規模かつ複雑な会話型ボットを構築する為の開発プラットフォームであり、多くの開発者に普及しているサービスとなっています。
効果的なシナリオの抽出
まずは現状の問い合わせ状況を分析し、問い合わせの件数が多く、かつ解決までのシナリオがシンプルなものを自動化対象のシナリオとして抽出します。例えば、下図の場合は「故障受付」のシナリオを抽出する形になります。
ユーザーインターフェースのデザイン
シナリオ抽出後はデザインを進めていきますが、ここで重要なのはユーザーインターフェースのデザインです。下図に記載されている「 Intents 」「 Entities 」「 Context 」「 Persona 」の4つの要素をもとにデザインを設計します。
これらの要素の中でも Intents と Entities は特に重要なため、次項以降で詳しくご説明します。
Intents とは?
Intents は、1回の会話におけるエンドユーザーの意図を表す言葉です。また、ユーザーがボットに対して期待することであり、ニーズとしても扱うことが可能になります。
例えば、シャツを注文するシーンを考えてみましょう。一口にシャツの注文とは言っても、人によって様々な表現があります。
このように、ユーザーの Intents と Google が開発した自然言語処理のテクノロジーである BERT を組み合わせることで「シャツを注文したい」という意図を判断し、顧客の真のニーズに応えることが可能になります。
Entities とは?
Entities は、会話の中で名詞にあたるものです。名前や日付など、基本的な用語で構成されており、会話の中から抽出して変数にマッピングすることができます。
Page の作成
Dialogflow CX には Page という概念があり、これは Intents と Entities で構成された1つの会話の箱のようなものです。ここでは、シャツ注文のシナリオを具体例に挙げてご説明します。
下図の青色の部分が Intents であり、黄色の部分が Entities です。
この Page をユーザーとの会話の要素として1つずつ定義し、 Route を作成することで会話の流れをデザインします。例えば、シャツの注文には「シャツの注文」という Intents があり、そこには「サイズ」や「色」、「デザイン」といった Entities が存在し、それを「 New Order 」と Page として定義します。
会話フローのイメージ
以下は Dialogflow CX での会話フローのイメージ図です。会話がスタートした後、大きく3つの要素が定義されていることがわかります。「店の場所を聞く」「営業時間を聞く」「シャツを注文する」の3つに分かれており、シャツ注文の場合は先ほどご説明した流れに沿って会話が進んでいきます。
次に、 Dialogflow CX の UI についてご説明します。 Dialogflow CX では、 Visual Builder が会話のフローをグラフィカルにデザインします。
下図に Flows という言葉が出てきますが、これは複雑な会話に関して、複数のトピックを扱うための仕組みです。1つの Flow を単一のモジュールとして扱い、組み合わせる事が可能です。また、 Page は会話の要素を示すものになります。
従来の IVR との違い
ここで、従来のプッシュボタンによる IVR と、会話型の IVR について、顧客体験を比較してみましょう。
従来の IVR であるメニュー分岐型フローの場合は、顧客が問い合わせしたい内容に行き着くまでに複数の分岐を経る必要があり、顧客目線でストレスに感じてしまうケースが存在しました。また、管理側の目線では、管理・メンテナンスにかかる工数が大きく、その点も課題となっていました。
その一方で、 Intents を中心とした会話型 IVR の場合、顧客の意図を正しく理解することができれば、顧客は知りたい内容にすぐに到達することが可能になり、価値の高い顧客体験を享受できます。それと同時に、管理者は煩雑なメンテナンス作業からも解放されます。
このように、 Virtual Agent や Dialogflow CX はコールセンターの DX に大きく寄与するソリューションとなっています。 DX の第一歩として、試してみる価値はあるのではないでしょうか。
Dialogflow CX を活用してチャットボットを活用する方法について以下の記事で詳しく解説しております。ご興味あります方は以下の記事も併せてご覧ください。
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Virtual Agent の効果検証
前章では Virtual Agent 設計のベストプラクティスをご紹介しましたが、ここでは実際に Virtual Agent を使ってボットを公開した後の効果検証について解説します。
Virtual Agent 展開のサイクル
Virtual Agent の展開サイクルは大きく3つのフェーズに分かれています。まずはシンプルかつ効果の高いシナリオをボット化してデプロイし、次に KPI を定義して効果検証を行い、必要に応じてボットを改善します。そして、最後に新しいシナリオを追加し、ボット応答でカバーできる範囲を広げていきます。
PoC ループに陥らないための KPI 設定
Virtual Agent の展開サイクルを効果的に回すためには、効果検証の KPI 設定が重要です。ポイントとしては、通話環境などの変動要素の影響を受けやすいものを KPI として設定しないことです。
例えば、 100%に近い認識精度を KPI に置いた場合、 PoC を脱することができずにボットの効果検証は困難になります。そこで、コンタクトセンターのオペレーションコストに直結する KPI を設定することで、ビジネス効果や削減効果を測れるため、この点を意識すると良いでしょう。
Contact Center AI と Smart Analytics による効果測定
価値のある効果測定を実現するためには、Contact Center AI ( CCAI ) と Smart Analytics を組み合わせるのがオススメです。例えば、 Smart Analytics ソリューションの中でも BigQuery と Looker Blocks を活用し、効果検証のテンプレートを使うことで、迅速な効果の見える化とデータ取得が可能になります。
BigQuery に関心のある方は以下の記事がオススメです。
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Looker に関心のある方は以下の記事がオススメです。
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設定した KPI 値に達しない場合の対処法
設定した KPI 値に達しない場合は、 Virtual Agent の VUI デザインに立ち返ることが重要です。以下、いくつか代表的な検討内容を記載しますので参考にしてください。
Contact Center AI に関する Q&A
Q.シナリオのカテゴリはどのような観点で作成すれば良いですか?
A.コンタクトセンターにおける業務内容に依存します。ただし、シナリオを広くし過ぎた場合、会話が発散してインデントを正しく判断することが難しくなるため、シンプルな定義を心がけると良いでしょう。
Q.Dialogflow CX は Dialogflow と比較してどのように変わりましたか?
A.ユーザーインターフェースが大きく変わりました。全体のコンテキスト(文脈)を UI 上で管理できるため、文脈や会話をツール上でデザイン可能になった点が大きなポイントだと言えます。
Q.Dialogflow で作成したチャットを Dialogflow CX に移行できますか?
A.単純移行はできません。 Dialogflow CX で改めて定義したシナリオに基づいて再構築する必要があります。シンプルなものであれば Dialogflow による継続運用で良いと思いますが、より複雑かつ高度なものをコンタクトセンターで運用したい場合は Dialogflow CX の利用をオススメします。
Q.IVR しか使ったことがないですが会話型のサンプルやデモはありますか?
A.英語版のみになりますが、簡単なボットを作るためのチュートリアルは用意されています。
Q.LINE との連携はできますか?
A.簡単に連携できます。ボットを構築した後は、 LINE だけではなく Facebook のメッセンジャーなどと連携することも可能です。
Q.国内で導入する場合、構築をパートナーに依頼できますか?
A.パートナーに依頼可能です。
Q.Dialogflow の導入事例はありますか?
A.三菱 UFJ 銀行にて、インターネットバンキングの一次対応ボットを Dialogflow で構築した事例があります。
Q.日本語音声に対応していますか?
A.対応しています。
Q.通話の録音機能はありますか?
A.ありません。
まとめ
本記事では、コンタクトセンターがデジタル変革を実現するための「コンタクトセンター DX 」について、 DX の第一歩として取り組むべき内容や利用するサービスの概要、実際の設計・効果検証のやり方など、一挙にご説明しました。内容をご理解いただけましたでしょうか。
昨今、マーケットの状況は大きく変化しており、顧客ニーズも高度化かつ多様化しています。このような状況下で価値のあるコンタクトセンターを運用するためには、従来とは異なる新しいデジタル変革を推進し、コンタクトセンター DX を実現する必要があります。
コンタクトセンター DX の第一歩として、まずは Virtual Agent を活用した新たなカスタマーエクスペリエンスの実現を目指してください。これにより、ボットによる顧客対応の自動化で顧客満足度を高めつつ、自社の工数削減やコスト低減に繋げることができます。
Virtual Agent は単体でも有効なソリューションですが、 BigQuery や Looker Blocks など、他の Google Cloud (GCP)のソリューションと組み合わせることで、さらに高い効果を得ることができます。
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