API エコノミーとは何か? Apigee を活用した新しいエコシステム構築を徹底解説!
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本記事は、2021年9月16日に開催された Google の公式イベント「オープンクラウドサミット」において、 Google Cloud の Apigee カスタマーエンジニアリング Japan リードである関谷和愛氏が講演された「 Apigee で作るオープン API エコノミー」のレポート記事となります。
今回は Google が提供する API 管理プラットフォームである Apigee の概要に触れつつ、 Apigee を活用した API エコノミーの形成について詳しくご紹介します。 Apigee の最新機能も盛り込んでいますので、ぜひ最後までご覧ください。
なお、本記事内で使用している画像に関しては、オープンクラウドサミット「 Apigee で作るオープン API エコノミー」を出典元として参照しております。
それでは、早速内容を見ていきましょう。
目次
Apigee とは?
Apigee は Google が提供している API 管理プラットフォームです。設計や開発、セキュリティ、、マネタイズなど、 API 活用のあらゆるステージを強力に支援します。
下図の右側に並んでいるのが API のサービス自身や API サービスを提供するバックエンドのシステムであり、左側に並んでいるのが API を使って価値を提供するフロントのアプリケーションになります。 Apigee はこの真ん中に位置しており、 API を公開する際の API 管理を担うものとなっています。
Apigee には2つの提供形態があり、 Google Cloud (GCP)上のマネージドサービスである Apigee X と、ハイブリッド・マルチクラウド対応ランタイムの Apigee hybrid に大きく分けられます。
Apigee X は比較的新しいサービスであり、マネージドで提供されているため、ユーザー側で Apigee を管理する必要はありません。一方、 Apigee hybrid は Google Cloud (GCP)以外の環境で Apigee のランタイムを実行したいとき、お客様が自身で Apigee の管理運用を行うためのものになります。両者とも中身は同じソフトウェアで構成されているため、基本的な機能に大きな差はありません。
Apigee hybrid は Anthos プラットフォームの上に形成することになるため、 Anthos がサポートしているところであればどこでも利用可能です。以下、 Apigee hybrid のランタイム対応環境を表にまとめます。
なお、 Apigee に関しては以下の記事でも詳しく解説しています。
API 活用の最前線に迫る! Apigee の3大活用パターン、国内事例、最新情報まで徹底解説!
API エコノミーへの道
Apigee の3大活用パターン
企業が Apigee を導入して API 活用を推進する際、大きく分けると以下3つの活用パターンに分けることができます。
それぞれ、具体的に解説します。
エコシステム構築
Apigee の活用パターンとして代表的なものがエコシステムの構築です。自社ビジネスの核となるサービスやデータを API 公開して、エコシステムを構築します。一般的には、「企業間連携」や「 API エコノミー」と呼ばれることもあります。
API 公開によって外部のアプリケーションと連携可能な状態になり、異なるアプリケーション同士を連携させることで様々な機能拡充を実現できます。 API を公開した企業の目線では、 API の利用者から API 利用料金を受け取ることができ、さらなるビジネススケールに繋がります。
ビッグデータ活用
Apigee はビッグデータの活用にも寄与するサービスです。昨今、データウェアハウス( DWH )やデータレイクなどにデータを保管している企業が多いですが、そのデータへのアクセスを API 化して一元管理します。
そうすることで、自社が保有するデータを市場に流通させることができ、データマネタイズを実現できます。企業のビッグデータ活用が叫ばれている現代においては、データマネタイズもビジネスをスケールするための重要なポイントです。
ビッグデータに関しては、以下の記事で詳しく解説しています。
ビッグデータとは何か?7業種のクラウドによるデータ活用事例をご紹介!
データレイクに関しては以下の記事で詳しく解説しております。
Google Cloud (GCP) で構築できる「データレイク」とは?概要、メリット、構築方法、ユースケースまで徹底解説!
データウェアハウス(DWH) に関しては以下の記事で詳しく説明しております。
データウェアハウス(DWH)とは?メリットや活用例まで一挙に紹介
IT モダナイゼーション
IT モダナイゼーションとは、自社の古くなった IT 資産を新しいものに刷新することです。ビジネスの変化に柔軟に対応するために、レガシーシステムを API で疎結合化して SoE ( System of Engagement :ユーザーとの繋がりを重視して設計されたシステム)と SoR ( System of Record :正確に記録することを重視して設計されたシステム)を分離します。
このように、 Apigee を活用して SoE と SoR を分離することで、 IT モダナイゼーションの自由度が向上します。例えば、 SoE の新しいサービスはスピード感を持って開発を加速し、 SoR のサービスは自社が計画した独自のスケジュールでモダナイズを進めていくなど、状況に合わせた柔軟な運用を実現できます。
IT モダナイゼーションに関しては、以下の記事で詳しく解説しています。
IT モダナイゼーションとは何か?市場背景、種類、メリット、実現するためのポイントまで徹底解説!
エコシステム構築における API 活用
ここまで、 API 活用の3つのパターンをご紹介しましたが、今回は記事タイトルにある通り「 API エコノミー」に焦点を当てて、エコシステム構築に関して詳しくご紹介します。
以下は、エコシステム構築の例を図で模擬的に示したものです。
真ん中にライドシェアサービスがありますが、これを開発する際にすべてを自分で作るのではなく、他社が公開している様々な API を利用することで、効率的な開発を実現できます。例えば、電話や地図、決済の API などが挙げられます。
そして、自社は配車アルゴリズムやドライバー・顧客管理など、ライドシェアサービスの中核的な部分の開発に注力できます。これが上図の上半分に記載されている「 API の利用」という部分に関する説明になります。
一方、開発したサービスを自社のモバイルアプリや Web でサービスとして提供するだけではなく、車を手配する機能を API として他社が使えるような形で展開することによって、航空チケットの手配やレストラン予約などに応用できるようにする、というのが上図の下半分に記載されている「 API の提供」という部分に関する説明です。
ライドシェアサービスの目線では、作成した API を使っている一連のパートナーが自社のエコシステムであると言えます。
エコシステム構築の実例
ここで、実際に API を活用してエコシステムを構築している企業の実例をご紹介します。富士フイルムビジネスイノベーション株式会社の事例になります。
2021年5月、 Google フォトに「プリントを注文」という機能が搭載されました。 Android 、 iOS ともに対応しており、セブンイレブンの店舗で写真を印刷し、いつでも受け取ることができる機能となっています。
この機能は一見すると Google フォトの新機能のように見えますが、実は富士フイルムビジネスイノベーション社の「 netprint 」というサービスの API を内部的に活用しています。 Google フォトで写真を印刷すると、その写真が netprint の API を経由してセブンイレブンの端末で出力できるという仕組みです。
これにより、 netprint 目線では自社のエコシステムが大きく広がりました。これまでは netprint の専用アプリをインストールしないと使えませんでしたが、 Google フォトを利用しているすべての人がプリント注文可能となっています。さらに、 Google フォト目線ではユーザーの利便性が大きく向上し、セブンイレブンにとっても来店客の増加に繋がりました。
今回の事例では、 API 活用によりエコシステムを構築することで、3社がそれぞれ「 win - win - win 」の関係を築くことができました。このように、個別のビジネスが API で繋がっていくことで形成されるのが API エコノミーです。
つまり、 API エコノミーとは「企業が自らのビジネスを API として公開し、それらを互いに活用していくことで、新たな価値を産み出しながら広がっていくデジタル経済圏」であると言えるでしょう。
Apigee で作る API エコノミー
ここからは、 Apigee を活用してどのように API エコノミーを形成するのか、という観点でご説明します。
Apigee の構成
以下は Apigee の利用者視点で見た Apigee の構成を表した図になります。
大きく3つの機能が提供されており、上から順に API 利用者をサポートするための Web サイトである開発者ポータル、実際に API の呼び出しを中継する API ゲートウェイ、管理者が API の状態を把握するためのアナリティクスとなっています。
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
開発者ポータル
開発者ポータルは API 利用者をサポートするための Web サイトです。ポータル内に置いてあるドキュメントを見て API の仕様を調べたり、サインアップやアプリ登録によってアクセスキーを払い出したりする機能も搭載されています。また、各種チュートリアルやサンプルコードもあり、 API 活用を全面的に支援するためのプラットフォームとなっています。
API ゲートウェイ
API エコノミー視点で API ゲートウェイを考えたときに最も大切なことは、 API の可用性を高い水準で保つことと、必要に応じて柔軟に拡張できるスケーラビリティを担保することです。その点において、 Apigee の API ゲートウェイは万全な体制を整えています。
可用性に関しては冗長化されたゲートウェイを保有しており、スケーリングに関しては負荷に応じて自動的にスケーリングするオートスケールの機能を搭載しています。これにより、ビジネス利用でも安心して使うことができます。
さらに、ポリシーと呼ばれる処理を行うための部品を多く持っており、難しいコーディングなしで一般的な処理を行うことができます。このポリシーも API エコノミーを迅速に広げていくために役立つ機能であると言えるでしょう。
以下、組み込みポリシーの一覧になります。トラフィック管理やセキュリティなど様々なカテゴリのポリシーが存在しており、お客様の声をベースとして毎年新しいものが追加されています。一般的な内容であれば、大半がポリシー利用でカバーできると言っても過言ではありません。
アナリティクス
API エコノミーを形成する上で大切なことは、ビジネス観点の KPI を設定し、その目標に向けて成果を測定し続けることです。 Apigee では、バリューチェーンにおけるすべてのポイントで様々なデータを収集し、それらを可視化・レポートする機能を搭載しています。下図に示した通り、あらゆる情報を取得することが可能となっています。
以下は Apigee が標準提供しているダッシュボードの例です。プロキシのパフォーマンスやレイテンシの分析など、必要な情報を見やすくビジュアライズし、今後の運用改善に活かすことができます。
API マネタイズ(収益化)オプション
最後に、新しく追加された「 API マネタイズ(収益化)オプション」をご説明します。これは API を公開して課金を受け取りたい場合に、自分でその仕組みを構築するのではなく、 Apigee が代行して仕組みを作ってくれるオプションになります。
API マネタイズ(収益化)オプションを活用することで、多様な課金モデルを定義し、それに基づいた形で課金制御を行うことができます。また、最終的に利用ユーザー単位での課金額をレポートすることも可能です。
なお、2021年12月時点では、段階的にリリースしていく機能の第一弾が発表されたばかりであり、現状は月額設定およびコールあたりの料金設定というシンプルな定義しかできず、後払いにのみ対応しています。今後、徐々に機能拡張を行い、様々な課金モデルに対応していく予定です。
Apigee に関する FAQ
Q.他の API マネジメントツールと比較した際の Apigee の強みは何ですか?
A.Apigee はサービス型のものをリリースしてから10年以上経過しており、豊富な実績を誇っています。現在では、1日あたり100億もの API コール数を処理しており、大きな負荷が掛かるブラックマンデーなどのタイミングでも可用性 100% で稼働し続けています。このように、高い可用性や柔軟なスケーラビリティは Apigee が持つ大きな強みであると言えます。
Q.Apigee と Google Cloud Load Balancing を連携することは可能ですか?また、マルチリージョン構成は組めますか?
A.Apigee と Google Cloud Load Balancing の連携は可能です。 Apigee X の場合は、インターネットからアクセスするためにロードバランサを置く必要があるため、可能というよりも必要という表現が正しいです。また、マルチリージョン構成を組むことも可能です。デフォルトはシングルリージョン構成となっていますが、必要に応じてマルチリージョン構成に変更できます。
まとめ
今回は Google が提供する API 管理プラットフォームである Apigee の概要に触れつつ、 Apigee を活用した API エコノミーの形成について詳しくご紹介しました。内容をご理解いただけましたでしょうか?
API エコノミーを形成する上で Apigee は有効なソリューションです。現在、多くの企業が Apigee を導入しており、独自のエコシステムを構築することでビジネスを大きく加速させています。
また、 Apigee X のリリースにより、 Google Cloud ( GCP )の他ソリューションとの連携やセキュリティ向上など、嬉しいメリットが多数追加されました。加えて、 Apigee hybrid のランタイム対応環境も追加されました。
このように、 Apigee は Google の成長とともにサービス自体もアップデートされます。これからも嬉しい機能アップデートが予想されるため、ぜひこの機会に Apigee の活用を検討してみてはいかがでしょうか?
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