オープンクラウドとは何か?クラウドの新時代を支える考え方や Google サービスの最新情報を一挙紹介!
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本記事は、2021年9月14日に開催された Google の公式イベント「オープンクラウドサミット」において、 Google Cloud 技術部長の安原稔貴氏が講演された「 Open Cloud Summit オープニングセッション」のレポート記事となります。
今回は「 Google が重要視しているオープンクラウドとは何か」について、 Google のクラウドに対する考え方やサービスの歴史を踏まえてわかりやすくご説明します。 Google の各種サービスの最新情報もご紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。
なお、本記事内で使用している画像に関しては、オープンクラウドサミット「 Open Cloud Summit オープニングセッション」を出典元として参照しております。
それでは、早速内容を見ていきましょう。
目次
クラウドを取り巻く市場の変化
現在、クラウドのテクノロジーが誕生してから約20年が経過すると言われています。これまで、クラウドは時代の変化とともに様々な段階を経てきました。
第一のステップとなる2000年代から2010年代は、仮想化をベースとした IaaS の世界でした。自前でサーバーを購入せず、クラウド上で運用する形態が主流となっていました。
第二のステップとなる2010年代から現在は、 PaaS / SaaS としてのクラウド活用が一般的でした。この時期から、多くの企業がクラウドを導入開始します。
第三のステップは近い将来に向けた話であり、今後はトランスフォーメーションクラウドの時代が到来します。クラウドを活用したデータ駆動型のビジネス変革の推進こそが企業成長の鍵になると予想されます。
そして、 Google では企業変革を実現するための要素として、以下4つの軸があると考えています。今回は、この4つの中でオープンクラウドについて詳しくご説明します。
クラウド活用の現状
オープンクラウドの内容に入る前に、その前提となるデータをご紹介します。米国の flexera という会社のグローバル調査によると、 92 % の企業がマルチクラウド戦略を採用しており、 82 % の企業がハイブリッドクラウド戦略を採用している、との結果が出ています。
この結果から、クラウド活用は多くの企業で一般的なものになっていると考えられます。マルチクラウドやハイブリッドクラウドは世の中に普及している状況だと言えるでしょう。
しかし、マルチクラウドやハイブリッドクラウドの環境では、頻繁に発生する課題があります。例えば、クラウド活用のサイロ化や、それに伴ってワークロード間の相互連携がされないことが挙げられます。また、人員やスキル、運用ノウハウが利用しているクラウドごとに分散し、運用コストの増大やリソース不足の発生を招く点も課題だと言えるでしょう。さらに、環境が複雑化するにつれて、包括的なセキュリティ対策の検討も必要になります。
その結果、変化に対応するための速度が鈍化し、企業変革を妨げる要因になります。そして、これらの課題を解決するのがオープンクラウドであると Google は考えています。
オープンクラウドとは?
オープンクラウドを考える上では、以下3点が重要なポイントになります。
それぞれについて順番に見ていきましょう。
オープンなテクノロジーの活用
オープンのテクノロジーを活用するメリットとして、ベンダーロックインされない点が挙げられます。また、マルチクラウドやハイブリッドクラウドにおいても同じ技術スタックを採用でき、オープンソースエコシステムによる様々な視点で開発された機能を活用することができます。
また、「オープン」という言葉は Google の企業文化の一部となっており、2009年には Google のブログに以下の文章が掲載されました。
日本語に訳すと「オープンな仕組みとはイノベーティブであり、我々だけではなくお客様にとって選択の自由とビジネス上の価値を生み出すものである。これは、我々自身がビジネスを成長させる過程で実感していることであり、同時に Google のコアとなる文化の一つである」という意味になります。この内容からも Google がオープンという文化を大切にしていることが読み取れます。
さらに Google では、複数のオープンソース活動を行なっています。 Google が関与しているオープンソースのプロジェクト数は2,000を超えており、 Google のブログ記事については60,000以上のレポジトリへのコントリビューションが確認されています。グラフが右肩上がりになっている点からも Google の「オープンであること」に対する注力度が伺えます。
次に、 Google のコンテナオーケストレーションの歴史を簡単にご紹介します。元々、 Google は15年以上前からコンテナを使い始めており、運用を効率化するためのオーケストレーションの仕組みを考えていました。
そして、この仕組みをオープンソースとして公開し、多くの企業が活用することで、さらなる改良や機能改善に繋がり、現在は Google Kubernetes Engine (GKE)というサービスとして、多くの方々に利用されています。
また、 Google では、オープンソースソフトウェアをベースとした様々なサービスを展開しています。以下の通り、 Cloud Run や Anthos Service Mesh 、 GKE / Anthos clusters などが代表的な例として挙げられます。
このように、 Google はオープンなテクノロジーをとても重要視しており、これまでオープンの文化とともに様々なサービスを展開し、自社を成長させてきたと言っても過言ではないでしょう。
ハイブリッドとマルチクラウド
ハイブリッドやマルチクラウドへの対応については、2019年にリリースした Anthos によって、様々な環境でアプリケーションの実行基盤を実装・管理する事が可能になりました。これにより、複雑化しやすいハイブリッドやマルチクラウド構成においても環境の一貫性を実現しています。
また、 Anthos Config Management を活用することで、ハイブリッドやマルチクラウド環境でのポリシー管理を実現しています。下図の通り、効率的なポリシー管理が可能になります。
パートナーエコシステムとの連携
Google Cloud (GCP)はフルマネージドなオープンソースサービスのためのプラットフォームを用意することで、様々な選択肢を提供しています。「オープンソースコミュニティをサポートするために重要なことは成功を共有する事である」という考えのもと、 Google はパートナーエコシステムとの連携を積極的に行なっています。
また、 Google はオープンソースソフトウェアパートナーが提供するマネージドサービスを Google Cloud (GCP)上で提供しており、様々なパートナーのソリューションを Marketplace から利用可能となっています。
ここまでは、 Google のオープンクラウドに対する考え方をご説明しました。この先は、 Google が提供している様々なサービスや機能について、インフラストラクチャとアプリケーションモダナイズの観点から、最新情報を交えて詳しくご紹介します。
Google 各種サービスの最新情報
GKE Autopilot
GKE Autopilot は GKE の新しい運用オプションです。 Control plane に加えて、 Node も Google マネージドになり、ユーザーは Kubernetes の利用に集中することができます。
また、 GKE Autopilot は CUD (確定利用割引)が適用可能であり、3年確約利用で 45% 、1年確約利用で 20% の割引が適用されます。これにより、従来よりもコストを抑えて Autopilot を利用することが可能になりました、
GKE Autopilot に関心のある方は以下の記事がオススメです。
Google Kubernetes Engine ( GKE )の2021最新機能を一挙紹介!さらに便利で使いやすくアップデート?
Anthos 1.8 の更新内容のハイライト
Anthos 1.8 の更新内容としては、以下の点が挙げられます。今回の更新により、 Google 管理の CA (Mesh CA) や Cloud Operations との連携がプレビューで利用可能になりました。
また、 Config Controller がプレビューで利用可能になったり、オンプレミス環境でも Workload Identity が利用可能になったりと、利便性が大きく向上しています。
Anthos と GKE の最新情報は以下の記事が参考になります。
Anthos と GKE でできることは?課題の解決方法や最新アップデート情報まで一挙に紹介!
Tau VM (T2D)
Tau VM (T2D)はスケールアウト型ワークロード向けの優れたコストパフォーマンスを提供するバーチャルマシンです。 x86 との互換性を維持した第3世代の AMD EPYCTM プロセッサを採用しており、一般的な汎用 VM と比べて
コスト パフォーマンスが 42% 高くなっています。
ウェブサーバーやコンテナ化されたマイクロサービス等のスケールアウト型ワークロードに適しており、リリース当初から GKE でも利用可能となります。本講演が行われた2021年9月現在ではプレビュー版の登録をしている最中でしたが、2021年10月にリリース済みとなっています。
Network Connectivity Center
Network Connectivity Center はハイブリッド環境で利用できる最新機能であり、ネットワークの管理を簡単に実現することができます。オンプレミスや VPC をハブ-スポーク型に接続でき、 VPN や専用線、 SD-WAN などを一つのネットワークに接続可能です。
また、ネットワークアプライアンスのサポートにより、既存環境とスムーズに統合でき、 Google のグローバル、高信頼、高品質なネットワークを活用できる点も大きな特徴となっています。
エクストリーム永続ディスク
エクストリーム永続ディスクは、 SAP HANA など、パフォーマンスが重要なワークロード向けの永続ディスクです。ハイエンド N2 、 M1 、 M2 VM で利用可能な最大12万 IOPS 、2,200 MB/s のスループットを採用しています。また、作成時に必要な IOPS を指定でき、容量と IOPS でそれぞれ課金される仕組みとなっています。
最大 100 Gbps の広帯域ネットワークオプション
このオプションは、独自実装の Google Virtual NIC (gVNIC)を利用した N2 と C2 VM 向けの高帯域幅の Tier 1 構成であり、 VM 間の通信(外向き)で最大100 Gbps を実現可能です。さらに、 GPU の利用なしで vCPU 数に応じて50 Gbps 、75 Gbps、100 Gbps に拡張できます。
オープンクラウドに関する FAQ
Q.マルチクラウドの事例はありますか?
マルチクラウドに関しては、株式会社プレイド様の事例が参考になります。元々、同社は AWS でマルチクラウド環境を構築していましたが、それぞれのクラウドを別々に管理しなければならない点が大きな課題として顕在化していました。
そこで、 Anthos clusters on AWS を活用し、マルチクラウドでも GKE 由来の高度なマネージド環境を構築することで、煩雑な管理から解放された事例となっています。
Q.ハイブリッドクラウドの事例はありますか?
ハイブリッドクラウドに関しては、株式会社 NTT データ様の事例が参考になります。同社では、業務基盤をクラウドで構築していましたが、クレジットカード情報などの機密データは、オンプレミス環境で管理を行う必要がありました。
そこで、オンプレミス部分は Anthos on-Prem 、クラウド部分は GKE をそれぞれ活用することで、同じテクノロジースタックを使って運用を統一しながらも、異なる環境を構築することに成功した事例となっています。
Q. Tau VM は日本で使えるようになりますか?
2021年9月現在、日本でのデプロイは目処が立っておりません。ただし、日本ユーザーから多くのニーズがあれば検討しますので、 Twitter などを通してご意見をいただければと思います。
まとめ
本記事では、 Google が重要視しているオープンクラウドについて、 Google のクラウドに対する考え方やサービスの歴史を踏まえてわかりやすくご説明しました。内容をご理解いただけましたでしょうか。
現在、企業におけるクラウド活用は新しいステップへと進んでおり、データ駆動型のビジネス変革を実現するためにはトランスフォーメーションクラウドが重要な鍵を握ります。変化の激しい現代において、クラウド活用の成否が企業の明暗を分けると言っても過言ではないでしょう。
Google は、以前よりオープンな文化を重んじており、その考え方は Google が提供する様々なサービスにも反映されています。 Google Cloud (GCP)をはじめとした Google のサービスを活用することで、オープンクラウドの活用を大きく前進させることができます。
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