デザイン思考と DX の関係性とは?デザイン思考を実践するための5ステップをわかりやすく解説!
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デザイン思考という言葉をご存知でしょうか?米国のスタンフォード大学で長らく研究されているビジネス手法であり、ユーザーに寄り添ったサービスを実現するために効果的な考え方です。
いま注目を集めている DX とも密接に関係しており、効率的に企業変革を進めていくためには、デザイン思考の実践が大切なポイントになります。本記事では、デザイン思考の概要から、 DX との関係性、具体的な進め方、成功事例まで一挙にご紹介します。
目次
デザイン思考とは?
デザイン思考とは、ユーザー要望に応えるためのサービスを生み出すことで社会にイノベーションを起こし、新しい価値を創造する手法のことです。一般的にデザインという言葉は美術的なものをイメージさせますが、ビジネスにおけるデザイン思考は、ユーザーの潜在ニーズを正確に捉えて、新しい価値提供によって問題解決を図ることを意味します。
デザイン思考は、米国のスタンフォード大学で長らく研究されている手法であり、同校の「 d.school 」はデザイン思考を養うためのプログラムとして世界的に有名です。 d.school はグラフィックデザインを学ぶ場所ではなく、総合大学における学科横断型のプログラムとなっています。
様々な専門分野の学生や教員が集まり、インタビューやフィールドワークなどを通じて問題解決の方法を模索しています。つまり、モノが中心になっているのではなく、人間中心のデザインとなっている点がポイントです。
スタンフォード大学はシリコンバレーに校舎を構えており、これまで数々の起業家を輩出してきました。シリコンバレーには、 Google 、 Apple 、 Facebook など、名だたる有名企業が拠点を構えていますが、これらの企業が大きなイノベーションを起こすことができたのは、少なからずデザイン思考が影響していると言えるのではないでしょうか。
デザイン思考とアート思考の違い
デザイン思考と似た言葉に「アート思考」がありますが、両者は明確に異なるものです。
以下、それぞれの違いを表にまとめます。
デザイン思考 | アート思考 | |
---|---|---|
アイデアの起点 | ユーザーのニーズ | 自由な発想 |
メリット | ユーザーに寄り添ったアイデアを創出できる | まったく新しい独創的なアイデアを創出できる |
デメリット | アイデアが独創性に欠ける可能性がある | 非現実的なアイデアを生み出す可能性がある |
アイデアの実現性 | 高い | 低い |
このように、デザイン思考とアート思考には様々な違いがあります。デザイン思考はユーザーのニーズを起点としてアイデアを創出するのに対して、アート思考は実現性やニーズを度外視して自由な発想を起点にアイデアを創出します。
つまり、アート思考はまったく新しい独創性を秘めた手法ではありますが、同時に非現実的なアイデアを生み出すリスクもあります。その意味では、実在するユーザーを起点として物事を考えるデザイン思考の方が現実性は高くなります。
デザイン思考とアート思考はどちらもメリットとデメリットが存在し、一概にどちらが良いというものではないので、それぞれの特徴を正しく理解して、シーンに応じて使い分けることが大切です。
デザイン思考と DX の関係性
DX はデジタルトランスフォーメーションの略語であり、近年は「最新のデジタル技術を駆使した、デジタル化時代に対応するための企業変革」という意味合いで、ビジネス用語として使われています。そして、実は DX とデザイン思考は密接に関係しています。
DX は「デジタルトランス」という言葉の通り、企業の在り方や日々の業務をデジタル化することを指しています。とはいえ、単にデジタル化をすれば良いというわけではなく、 DX によって実現した新しいビジネス環境を有効活用することで初めて成功だと言えます。
例えば、仮に高性能な IT ツールを導入したところで、社員の IT リテラシーが低ければ使いこなすことはできません。いくらツールを整備してもデジタル化に対応することはできず、結果として DX は実現できないままです。
だからこそ、 DX の実行フェーズに入る前にプロジェクト全体をデザインする必要があるわけです。本来、デザインは「設計」という意味を持っており、その本質はユーザーのニーズを捉えて成功体験を作ることだと言えます。
つまり、組織や社員の潜在的なニーズおよび課題を探るため、本質的な価値創出を行うためにデザイン思考は有効な手段であり、慎重にデザインをすることで効率的なデジタル化と DX の成功を実現できるということです。
DX に関連する記事は、以下が参考になります。
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DX におけるデザイン思考のメリット
社員の意見を DX に反映できる
デザイン思考はユーザーを起点とした価値創造を重要視する考え方です。そのため、 DX でデザイン思考を実践することで、自社の社員が求めているものを明確化し、実運用に反映することができます。
DX は組織全体で進めていくものであり、会社全体の生産性を高めるためには社員の意見に耳を傾けることがとても重要になります。つまり、デザイン思考を DX に取り入れることで、社員主体の本質的な DX を実現できるというわけです。
ビジネスに必要な思考力が身に付く
デザイン思考には深い思考力が求められます。ユーザーが何を望んでいるのか、将来どのような姿であるべきか、など、ユーザーを観察した上で潜在ニーズを細部まで探り、アクションに落とし込んでいきます。
このプロセスにより、デザイン思考を実践するとともにビジネスに必要な思考力を身に付けることができます。いわゆる「指示待ち」のような姿勢ではデザイン思考を進めることはできないので、社員のビジネススキル向上にも大きく寄与します。
顧客視点を養うための練習になる
社内の DX を進める場合、デザイン思考の分析対象は自社の社員になりますが、一連のプロセスを体験することで顧客視点を養うための練習になります。第三者の潜在ニーズを探るという意味では、社員であっても顧客であっても本質は同じことです。
そのため、デザイン思考を実践することで DX を効率的に進められるのはもちろんのこと、そこで得た知見を日々の業務に応用して、顧客視点のサービス開発や CS (顧客満足度)向上に繋げることが可能になります。
デザイン思考を実践するための5ステップ
ステップ1.ユーザーを把握する
デザイン思考はユーザーを把握することから始まります。ユーザーの視点から課題や問題点を探り、効率的な解決策を検討します。このとき、徹底的にユーザーになりきって考えることが重要です。
例えば、ユーザーに直接インタビューをしたり、アンケートを取得すると本音に近い意見を聞けるのでオススメです。ユーザーを正しく知ることがデザイン思考の第一歩です。このプロセスを入念に実践すればするほど、最終的なアウトプットの質は上がります。
ステップ2.想定課題を定義する
ユーザーの把握ができたら、次に想定課題を定義します。難しい言葉のように聞こえますが、端的に言うと、集めたユーザー情報をもとにして「ユーザーが何を求めているのか?」という仮説を立てるイメージです。
ユーザーの想定課題を明確に定義することで、課題解決に向けたアクションを検討しやすくなります。多くの情報から取捨選択して、本質的に解決すべき課題を抽出してください。これにより、デザイン思考の方向性を決めることができます。
ステップ3.課題解決に向けたアイデア出しを行う
デザイン思考において最もクリエイティブなプロセスであり、定義した想定課題を解決するためのアイデアを出していきます。個人でアイデア出しを行うこともありますし、チームを組んで実践することもあります。
多くのアイデアを生み出すためには、ブレインストーミングなどの手法を用いることも効果的です。アイデアの良し悪しはあまり気にせず、まずはたくさんのアイデアを出せるように意識してください。多種多様なアイデアが揃ったら、その中から有効なものに絞り込みます。
ステップ4.試作品としてアイデアを具現化する
生まれたアイデアをもとにして、サービスやプロダクトの試作品を作ります。あくまでプロトタイプとしての制作なので、時間やコストをかけずに気楽に進めていきましょう。本番環境での利用が前提ではなく、ここまでのプロセスで見落とした課題を発見することが目的です。
そのため、試作品は完璧なクオリティが求められるわけではありません。むしろ、クオリティを重視するあまりに時間をかけてしまうと、この後のプロセスに着手するのが遅れてしまい、結果としてデザイン思考の意味が薄れてしまいます。
ステップ5.ユーザーに対してテストを行う
最後に試作品でユーザーテストを実施します。テストをして終わりではなく、このプロセスで得られたユーザー反応をもとに仮説検証を行い、ニーズにマッチしているかどうかを再度確認します。
このように、デザイン思考では完成したアイデアをそのまま使い続けるのではなく、常にユーザーの声を拾いながら改善や再考を重ねて、より良いサービスを追求していくことが重要なポイントになります。
デザイン思考の成功事例
Apple
デザイン思考と言えば、 d.school を創設したデイヴィッド・ケリーの存在を忘れてはいけません。実は Apple 創業者のスティーブ・ジョブズは、このデイヴィッド・ケリーのクライアントでした。そして、デザイン思考を実践した結果として二人が作ったのが Apple の初期型マウスでした。
Apple は今でもデザイン思考を実践し続けており、数々の製品において大きな成功をおさめています。例えば、 iPod は CD プレイヤーが主流だった時代に「時間や場所を選ばずに音楽を聴きたい」というユーザーの潜在ニーズから開発が始まりました。
BRAUN
Apple と同様に、 BRAUN もデザイン思考を実践して成功した企業の代表例です。 BRAUN はユーザーの不満をなくすことを DX のゴールに置いており、ユーザーがどのような課題を持っているのかをデザイン思考で徹底的にリサーチしました。
その結果、 BRAUN の電動歯ブラシのユーザーは専用充電器が必要であることや換えのブラシを買い忘れてしまうことに不満を持っていることを突き止めました。そして、これらの情報をもとに DX を進めた結果、 USB 充電が可能でアプリとの同期によってブラシヘッドの使用状況を追跡できる、新しい製品の開発に成功しました。
まとめ
本記事では、デザイン思考の概要から、 DX との関係性、具体的な進め方、成功事例まで一挙にご紹介しました。企業が保有する情報量が増え、消費者ニーズが多様化する現代においては、デザイン思考がとても重要な考え方になります。
デザイン思考は DX を推進する上でも大きな効果を発揮し、社員の声を運用に反映することで持続的な企業変革を実現します。さらに、デザイン思考を実践することで顧客視点を養うことができ、社員のスキルアップにも繋がります。
Apple や BRAUN を筆頭に、世の中でイノベーションを起こしている企業の多くはデザイン思考を取り入れ、積極的に日常業務の中で実践しています。本記事を参考にして、一度デザイン思考を試してみてはいかがでしょうか。
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